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まだ終わっていない、福島の動物たちの避難生活 寄稿:田中綾子

以下は、先日、一時帰国し、福島を訪れたアメリカの田中綾子さんからの記事と写真。

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震災から1年。当時は人間と同じくペットを探せ!という話題もあった。各地にも獣医師会などが中心となって立った救援本部があり、シェルターも設置されていた。
幸いなことに、宮城や岩手の本部は解散するまでに至り、動物たちは次の行先を見つけていった。(譲渡、民間団体への移動、里親など)そして残った仕事は飼い主探しといったところである。
しかし、一か所だけ、いまだに動物たちがシェルター暮らしを続けている県がある。それは、原発により被災した、福島県。
福島県には福島県動物救護本部(福島県、郡山市、いわき市、(社)福島県獣医師会、福島県動物愛護ボランティア会により構成)が災害発生当初よりたっており、被災動物の受け入れを続けている。
http://www.pref.fukushima.jp/eisei/saigai/kyuugoindex.htm
現在救護本部のシェルターは2つあり、1つは飯野町、もうひとつは三春町にある。
まず20キロ圏内から動物が救出されてくると、飯野町のシェルターでガイガーカウンターを使って被ばく度を確認。その後、除染と健康チェックをへて、飯野町か三春町のシェルターに収容する。
シェルターには現在、犬(多くは大型犬)と猫が合計約300頭いる。このうち数頭は飼い主不明で保護している状態だが、大半には飼い主がいる。彼らがシェルターにいる理由は、家族が避難先にいるため、ペットを飼育できないためだという。
でも、多くの飼い主は「いつか自宅に戻れるのではないか」という望みを捨てておらず、手放したいとは思わない。また、ペットは「所有物」であるため、勝手にほかの人に引き取ってもらうわけにはいかず、シェルター生活が長期化している。

シェルターでは1頭1頭が少しでも快適に過ごせるよう、工夫がされている。犬は場所のあるかぎりではケージを使わずにたてつけの小屋に住んでいて、寝るスペースと日中を過ごすスペースがしきれるようにもなっている。猫はいわゆる3段ケージのようなかたちで、いくつか部屋の中に段がつくられていて、上り下りをして遊べるようになっている。
それぞれは1頭ずつでくぎられているため、ほかの犬や猫(同じ家族から来た子を除く)とすごしてストレスを感じることもない。
現状ではこれらのスペースに入りきらず、廊下のあいているところにケージをおいて対応している犬猫も数等いる。
犬の運動は散歩か、ドッグランでの遊びで行っている。

彼ら動物たちを通して、家族の声が聞こえてくる。「早く一緒に住みたいよ、おうちに帰りたいね」

あるボランティアに聞いてみた。「どうしてここでボランティアをしているのですか」
答えは次のように帰ってきた。「私はここが地元で、被災しなかったから、同じ福島でも近くで被災した人たちのために少しでも役に立てればと思って。。。」

職員のひとたちの熱意や努力によってこのような施設ができあがっているが、こういう善意もなければ動物たちが生活していくことはできない。

昨年の3月におしよせた善意の波。ボランティアという言葉を聞かない日がなかったのではないかという日常。今でも、必要とされている場所があるということをこのボランティアの声で、痛切に感じた。

震災、いや、「人災」はまだ終わっていない。原発問題が解決されなければ、動物たちも避難生活が続く。今後もボランティアを含め、長期的な支援が必要だ。
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by sasanoel | 2012-03-11 17:01 | 動物