木村潤平・秦由加子がやってくれた! 一般の大会でパラリンピック・スイマーがメダル!
7月6日(土)東京の沖160キロに浮かぶ伊豆諸島のひとつ新島で、東京アイランドシリーズ・第19回新島オープンウォータースイミング大会が行なわれ、木村潤平(パラリンピック競泳でアテネ・北京・ロンドンと3大会連続出場/両下肢麻痺)と秦由加子(元アジアパラリンピック競泳日本代表/片足大腿切断)の2人の障害者選手が出場、健常者のなかで3位、4位を勝ち取り、パラリンピアンの実力を披露した。
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大会は、Aタイプ=4.5km、Bタイプ=3km、Cタイプ=1.5kmの3つの距離に男女合計約250名のスイマーが参加して行なわれた。
南からの風が吹いて、波はうねりが高かった。陽射しが強く暑い日となった。「今年の波は、選手には大変だったなぁ」競技後に地元のおっちゃんが波についてつぶやいた。
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そんな中、木村潤平は、3kmの部で80人中4位。45分29秒でセンサーパネルにタッチした。レース前にコース情報を教えてくれた、ミスター新島の近藤貴司(35歳)は3位。木村と1分38秒差だった。
途中、木村のあとにつづいて一緒に泳いでいた女子選手がいた。女子の部で1位(男女80人中5位)になった石田安梨沙(25歳)だ。二人はゴール後に出会い、表彰式が終わるまで話が尽きることがなく喜びを分かち合っていた。木村にとって、はじめての一般大会出場だったし、オープンウォーターで泳ぐことや、大会の雰囲気は、楽しくて仕方ないようで、見ているこちらも嬉しくなるほどだった。
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アジアパラリンピック日本代表・秦由加子は、この大会では最も長い4.5kmで挑戦した。女子の部で21人中4位、男女でも68人中12位だった。秦は、5月に行なわれた新島トライアスロンでも松原衣理選手と一緒にリレーの部に出場、スイムのパートを担当し、スイムラップ2位だった。早くから競泳からトライアスロンに転向を宣言した秦は、すでにエイジグループの仲間やパラリンピック陸上を支える義肢装具士らとも交流し、自分の思う道を確実に前進している。つぎは8月の「湘南オープンウォータースイミング」に10kmで出場する。秦は心から挑戦を楽しみ、周囲はいつも彼女から目が離せない。

*****
木村潤平のゴール後のこと。砂浜を一本の足でケンケンしてゴールに登ってくる選手がいた。秦と同じ大体切断のトライアスリート渡邊新一郎だとあとで知った。渡邊はセンサーパネルにタッチし、ゴールテープに倒れ込んだ。充実したレースを終えたことは、その表情で一目瞭然だった。スタッフは一本足の選手のゴールを見守り、健闘を讃えて微笑みを向けていた。
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3kmの部・59分10秒、80人中43位だったが、もちろん順位やタイムは問題ではない。誰の助けがなくとも当たり前というようにゴールした渡邊に、「これがトライアスロンだ」と感じた。実際はオープンウォータースイムなのだが・・。それはさておき、障害者であれ、障害のない者であれ、自然が相手の競技で重視すべきことは、人がきめたルールのほかに、大自然がもたらすハードルがあること。固有の得意不得意が自分の内と外にあるのは当たり前で、その条件をふまえ、どう泳ぎきるかは、つねに選手が自分で考え、判断しなければならない。
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競技を続ければ、いろんな状況に遭遇するだろう。距離も環境も自然が相手だからそれぞれに違うなかで、固有の弱みや障害を克服しなければゴールにたどり着けない。
ハンドラーをしてくれるチームメイトがいる場合、日本代表で日の丸を背負う場合、たった一人で見知らぬところで自分を試す日もくるだろう。試合の度に、その条件のもと最後まで自分をコントロールしていかなければならない。そんなふうに、その時々に応じていくことが、オープンウォーターやトライアスロンのおおきな楽しみのひとつになるのではないだろうか。そんなことを感じた。


〜新島オープンオォータースイムにみた、ユニバーサルな光景〜
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嬉しい驚きは、この新島オープンウォータースイムには、木村、秦の他にも、切断者、聴覚障害者、高齢者などが多く見られたことだった。会場にながれるMCには手話通訳がついており、手話で話す参加者がいた。大会事務局によると、聴覚障害の選手は昨年から10名ほどのチームで参加しているとのことだった。

木村・秦を率いた、チーム三桁(100歳まで現役の意味)の金城雅夫氏は、65歳のハワイアイアンマン完走者。自転車のメカニックにして視覚障害選手のガイド歴20年以上。しかし、視覚障害の選手のガイドとして参加しようとしたとき、複数の大会運営者から出場を拒否されたという。タンデム車の走行を問題にされたり、時には障害者が競技ができるはずがない、など根拠のない言いがかりを浴びせられた。そんな悔しい経験があり、あきらめずにやってきた今がある。
今回の新島で、敵対していると思っていた主催者から「頑張りなさいよ」と、声をかけられたという。東京都が五輪招致合戦で必死にパラリンピックを味方につけようとしている背景もある。いずれにせよ、金城にとっては追い風だ。その活動や願いが、これからの障害のある選手の挑戦を導いてくれるだろう。
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さらに、新島での出会いは貴重なものとなった。高齢なスイマーを率いて参加していたのは「海人くらぶ」の大貫映子(てるこ)さんだった。大貫さんは、22歳の頃、ドーバー海峡を世界で初めて渡った日本人として英仏海峡水泳協会の公認記録をもっている。その経験をもとに、海人クラブでは障害のある人はもちろん、さまざまな人が水泳を楽しむための指導をしている。
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海人クラブのスタッフのひとりは、高齢の方の伴泳をしていた。オープンウォーター観戦自体がはじめてだから許してほしいが、伴泳を視覚障害以外の人にするというのを初めて知った。
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これまで、障害者のスポーツが健常者のスポーツと区別されているのが当たり前と思っていた日本で、どうしたものかと悩みながらも、パラリンピックに向かう選手の競技環境のことなど伝えてきた。そんな自分にとって、エメラルドグリーンの海をもつ新島で目にした光景は、とても嬉しかった。
世界で闘い、練習を重ねてきたパラリンピック・スイマーの身体的能力、競技力が一般の人々の前で証明されたことに加えて、新島の大会スタッフが、今回多くの障害者をごく自然に受け入れ、対応していた。自然が相手のスポーツで、障害者の参加は安全面が心配だという意見があるが、命の重さは障害者も健常者も同じこと。選手と大会運営側が協力していけば、これから経験をかさねながら多くの人がスポーツを楽しむことができるようになるだろう。

<写真について>
・チーム三桁とその周辺の人々で
・3kmのスタートへ。木村潤平とハンドラーを努める金城雅夫
・とにかく楽しそうに泳ぐ木村選手
・3km男子の表彰式。中央が木村、右がミスター・新島の近藤貴司選手
・左から近藤選手、金城さん、木村選手 レース前
・秦由加子選手とハンドラーの2人。左は金城さん、右は地元の人
・4.5km女子の表彰式。左から4人目。
・大腿切断の渡邊新一郎選手、ハンドラーなしで出場した
・ゴールした渡邊選手を大会スタッフは笑顔で讃える。
・木村潤平選手と一緒に泳いだ石田安梨沙選手
・ハンドラーとして活躍する金城さん。木村選手の折り返しのあと
・アイアンマンの金城さんとドーバー海峡を泳いだ大貫映子さん
・大会を終えて。大貫さんの「海人くらぶ」のメンバーといっしょに、チーム三桁と周辺の人々
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by sasanoel | 2013-07-13 09:17 | トライアスロン
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被災者も非被災者もともに平和で楽しく暮らせる社会をめざして。2011.03.11 ご連絡、記事についてのお問い合わせ、取材依頼は筆者までメールで。sasanoel@gmail.com
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