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被災地の中心で ー旅館・小松荘 ご主人、清水石さんー

写真:営業再開に取り組む小松荘/万石浦で地元の人と小松荘亭主・清水石さん
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大地震から3ヶ月が過ぎ、6月12日(日)。日本一の水揚げ岸壁(1,200m)をもつ石巻漁港に近い湊地区緑町にある、旅館・小松荘を訪ねた。

1階部分は倒壊、かろうじて無事だった2階に住み、旅館の再開を準備するご夫婦がいる。地震の日、ご夫婦は小松荘にいなかった。奥様は入院で仙台へ、ご主人は外出先のバスの中で一夜を過ごしていた。翌3月13日に戻ってくると、留守番をしていたご主人のお姉さんが津波の被害のため亡くなった。

地震後1ヶ月間は、小松荘を頼ってきた近隣の人々に開放し、避難所にしていたが、現在は、旅館の再開を目標に避難所を閉鎖した。現在工事中ですが、7月の営業再開に向け、ご夫婦の復興への取り組みが続いている。

「(被災で)目標を失ってしまったことが、被災地生活のつらさだと思う」と、清水石さんはいう。あまり商売ということではなく、旅館を早く始めることが社会への貢献につながると感じているようだ。いま、旅館の再開が清水石さんの目標となり、しっかりと前に進んでいる印象だ。
再度歩み始めた老夫婦の取り組みは、広い被災した荒れ野に咲いた、強く、ささやかな花のようにかがやいていた。

ーー被災地への観光についてどう思われますか?
被災地外で「被災地観光」というと、心ない見物目的の野次馬のようなイメージもあり、マナーの悪さも心配されるといった、そんな存在を思い浮かべるのではないだろうか。
いま、旅館を再開しようという清水石さんにとって「被災地観光」とは、どのようなものだろうか。

「被災の現実を観てもらいたい。子供たちにも来て欲しい。こんな状況なんだということを知ってもらいたい」
清水石さんの言葉は自然だと思われた。被災地に学びたいと思う非・被災者たちへの心強いメッセージだと思う。

町内会長もしている清水石さんのところには、ボランティアや現場作業をする企業からの宿に関する問い合わせが多くあるという。そのことも、清水石さんを営業再開へと導いたのだろう。
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石巻のボランティアたちは、専修大学や運動公園などの広場でキャンプ生活をしながら、泥かきや土木作業に関わっている。
宿泊施設がないため、石巻のボランティアや自衛隊、遠方からの作業員は今もテント暮らしが常識となっている。見舞い客や被災地観光者も日帰りか、もしくは1時間はかかる仙台や古川などに宿泊している。

地元の人が、仮設住宅の当選を待ち、避難所や倒壊の危険のある家屋の2階で生活している中、市外・県外からの滞在者のための施設は後回しになる。誰もそこに文句を言わない。それどころか、泥まみれのボランティアが風呂を要求すれば、非常識だとか、マナーが悪いと言われることすらある。長期滞在など不可能に近いが、実際は多くの人々が自前のテントを持ちこんで支援を続けている。

地震直後の被災地は、支援者の自給自足、自己完結した行動が現地滞在の支援者に求められた。信頼関係も生まれてきた今は、あらたなニーズ(課題・目標)を模索する時期ではないだろうか。
ライフラインや雇用の復旧、経済の正常化とともに、被災地へ足を運ぶさまざまな立場の人との対話や交流により、被災者・非被災者がともに生きることを考えていきたい。それが、これからの被災地観光の要素になるのではないだろうか。
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by sasanoel | 2011-06-14 00:59 | 東北