湯浅一郎さんの講演会『福島原発震災から三陸の海の放射能汚染を考える』、石巻で
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原子力事故により大切な海が失われるかもしれないという時がきてしまった。
日本の故郷を象徴する風景、世界の宝の漁場、無数の営みをはぐくむ母なる海が、これまでにない危機にさらされている。SF映画の予告ではない。

8月21日、湯浅一郎さんの講演会『福島原発震災から三陸の海の放射能汚染を考える』が、石巻市労働会館で行われた。主催は、原子力発電を考える石巻市民の会。企画は、石巻で女川原発の建設反対をとなえてきた日下郁郎さん。
会場には、水産加工業者や、石巻や女川の浜で漁をいとなんできた漁師さんたちもきていた。多くが、津波で仕事や家族、仲間を失い、福島第一原発の事故を自分たちにも起きたかもしれない生々しいできごととして胸に刻んでいる。

「仮設魚市場オープン」「希望の缶詰」など、復興ムードを盛り上げ、ホッとするような報道が多い中で、なかなか口にしづらいが、ここにいる人々がもっとも心配していることがあるーーー「海は、大丈夫なのか?」
この町の人々が選んだ講演会のテーマだった。

平和運動のNPO団体・ピースデポ(所在地・横浜)の代表でもある湯浅さんは、女川に青春時代を費やしていた。1970年代、東北大学の学生だった湯浅さんは、女川原発建設に反対し、戦っていた。修士論文は、女川湾の海洋観測だった。学生当時ビラを配っていた女川の浜浜の集落は、いま、無惨な爪痕を残している。
3月11日の事故発生で、福島ではなく、とっさに牡鹿半島にある女川原発を心配したという。
この地で、このような形で講演をすることになった湯浅さん。石巻の被災した漁業者たちを前に、どのような気持ちがしただろう。講演会の翌日は、日下さんとともに北浦や五分浦をの浜浜を訪れたという。

女川原発で、福島第一原発と同じような事故が起きなかったのは、タマタマだ。もし事故が起きていたら、1954年のビキニ環礁での核実験後の調査で明らかになった、深刻な放射能汚染が三陸の海に起きていたかもしれない。
福島原発の事故による海洋汚染については、ビキニの事例を引き合わせて考えなければならない現状だ。
とても恐ろしいことだが、今こうしている間も、福島第一原発の事態(海洋への放射能流出)は、炉心を冷やすためにひたすら水を流し続けたままの状態が続いている・・。

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会場の漁師さんから、「石巻の魚はいつになったら食べられるのか?」との質問が出たが、湯浅さんにも現実はわからない。食べられないのか?という疑問も残る。漁業者であれば、自分が食べられないと思う魚を市場に出す事ができないということもあるだろう。漁業が再開できないことを物語っていた。

実際、福島原発の事故にともなう三陸沖の放射能汚染で、沿岸の養殖ものはほとんど汚染されておらず、アワビ(七ヶ浜)から微量に検出されているという。沖合のサバ、タラ、サケ、サンマ、海底の土からは、平常時より高いセシウムが検出されているという・・。
潮流は南下していくため、福島から茨城県北部の漁場は操業停止となっている。

海はつながっているのだから、産卵期時や、潮の流れから、水や魚がいつどのように移動するかを考え、その上で、出荷する前に測定できるような方法がないのだろうか。

いまスーパーで、「国産」とあれば、産地隠蔽?と疑ってしまう。見えない汚染に誰もがおびえるか、値が下がっていることで食べざるを得ない人々もいる。宮城県産の海産物を義援金の代わりに高く買う人もいる。現実を見ずに復興ムードをいくら盛り上げても、疑心暗鬼を募らせるばかりだ。

海洋汚染による食品の問題は、風評被害(情報の問題)ではなく、原発事故による災害だ。風評被害として、情報源の政府やメディアに責任を押し付けたところで何も解決しない。市民がメディアリテラシー(情報が何からどうできているか)を問い、信頼構築もしながら、一方で根本的な問題解決を目指すのがいいのかもしれない。難しいことだけど・・。

海洋汚染は地球の悲鳴。原発は食への被害をもたらし、日本中がいま原発被害の当事者で、同時に、海外へも被害を与える加害側の国民にしてしまった。湯浅さんの話から、楽観できることはないと思った。

講演は、三陸の海の大切さ、人間のしようとしていることの愚かさにつながる現状を、石巻の漁業者へ報告するものだった。もはや原発反対の集会ではなく、津波により大きな被害をうけた漁業者と、女川の海を守ろうとしたかつての青年の皮肉で運命的な再会の場だった。
湯浅さん、日下さん、石巻の人々の交流はこれからだ。(私も、仲間にいれてもらい、一緒に考えていきたい)
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【写真について】
1枚目;湯浅一郎さん
2枚目;会場には、石巻・女川の漁業者が多く参加した。NHK仙台の科学部の記者さんもいた。
3枚目;講演会の企画を担当した日下郁郎さん

そのほかの2011年8月21日、湯浅一郎氏講演会の写真
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by sasanoel | 2011-08-24 17:32 | 反原発
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